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植物の生殖細胞分化についての研究成果がCurrent Biology誌に掲載されました

2023年9月29日

植物の生殖細胞植物は、減数分裂で生じた単相(n)の細胞から、多細胞体である「配偶体」をつくり、その中から生殖細胞を分化させるという、ヒトなどの動物とは異なる有性生殖の様式をもちます。配偶体は、花の咲く植物(被子植物)では花粉・胚のうという小さな組織ですが、コケ植物では葉状体・茎葉体という生活環の主役です。山岡班では、ほぼ全ての植物がもつ2つの遺伝子BONOBOLRL/DROPが、生殖細胞の分化のためにヘテロ二量体として協調して働くことを明らかにしました。LRL/DROPはシャジクモ藻類も持っていますが、BONOBOは陸上植物だけが持つ遺伝子です。陸上植物はおよそ5億年前にシャジクモ藻類の一種から誕生して進化してきましたが、このヘテロ二量体はその頃に生み出され、進化の中で植物の生殖細胞をつくるための「鍵」として働いてきたと考えられます。本成果は、2023年9月29日に国際学術誌「Current Biology」オンライン版に掲載されました。

論文情報:

A bHLH heterodimer regulates germ cell differentiation in land plant gametophytes.

Misaki Saito, Ryosuke Momiki, Kazuo Ebine, Yoshihiro Yoshitake, Ryuichi Nishihama, Takuya Miyakawa, Takeshi Nakano, Nobutaka Mitsuda, Takashi Araki, Takayuki Kohchi, Shohei Yamaoka

Current Biology (2023)

https://doi.org/10.1016/j.cub.2023.09.020

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植物科学の最前線(BSJ-Review)に総説が掲載されました

2023年4月3日

2022年9月17日に開催された日本植物学会第86回大会シンポジウム「植物細胞の分化運命の制御と可塑性」の講演をまとめた総説集が植物科学の最前線(BSJ-Review)に掲載されました本領域のメンバー全員が執筆しており、講演者との今後の新たな繋がりも確認できた総説集となりました。

興味深い記事がたくさん掲載されておりますので、是非ご覧ください。

論文情報:

第14巻 2023年発行 BSJ-Review vol. 14 (2023)
日本植物学会第86回大会シンポジウム
A.「植物細胞の分化運命の制御と可塑性」

https://bsj.or.jp/jpn/general/bsj-review/archive.php#BSJ-Review-14A

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受精前に精細胞が露出する現象を観察した論文が掲載されました

2023年1月31日

植物の精細胞は、自ら泳ぐことができない代わりに内部形質膜という一重膜に覆われて花粉管の内部を輸送されます。花粉管から放出された精細胞は受精相手の細胞と直接接触できるよう、内部形質膜を素早く脱ぎ捨てると推測されてきました。丸山班の杉特任助教はライブイメージング技術を利用し、シロイヌナズナの精細胞が花粉管から放出されるとすぐに内部形質膜が断片化してはがれる様子を実際に観察しました。

 

論文情報:
Removal of the endoplasma membrane upon sperm cell activation after pollen tube discharge.
Naoya Sugi, Rie Izumi, Shun Tomomi, Daichi Susaki, Tetsu Kinoshita, Daisuke Maruyama

Frontiers in Plant Science (2023).

http://doi.org/10.3389/fpls.2023.1116289

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アクチンが花粉管誘引にはたす役割を示した論文が掲載されました

2022年12月23日

 卵細胞の両脇にある2つの助細胞は、繊形装置とよばれる細胞膜と細胞壁が複雑に陥入した特殊な構造を外側に向け、そこから花粉管を誘引する小さなタンパク質(ペプチド)を分泌します。この受精に重要な花粉管誘引ペプチドの極性分泌はこれまで不明でしたが、丸山班の須﨑特任助教と卒業生の泉理恵さんは、名古屋大学とケンタッキー大学との共同研究で、助細胞内を縦走するアクチン繊維が必須の役割をはたすことを突き止めました。

 本成果は2022年12月23日に米国植物専門誌 The Plant Cell に掲載されました。

論文情報:
F-actin regulates the polarized secretion of pollen tube attractants in Arabidopsis synergid cells.
Daichi Susaki, Rie Izumi, Takao Oi, Hidenori Takeuchi, Ji Min Shin, Naoya Sugi, Tetsu Kinoshita, Tetsuya Higashiyama, Tomokazu Kawashima, Daisuke Maruyama
The Plant Cell (2022)

https://doi.org/10.1093/plcell/koac371

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細胞集団からレーザーで花粉を選抜する論文が掲載されました

2022年12月21日

 細胞集団から目的の細胞を選抜するには様々な方法があります。一方で、従来の方法は多量の細胞や専門技術を必要とし、植物毒性を示す場合もあるなど、様々な問題点がありました。本研究では近赤外レーザーを用い、花粉集団から目的の花粉を半自動的に選抜する手法を報告しました。レーザー処理後の花粉集団を受粉すると、めしべ上で花粉管を伸ばす様子が観察されたことから、目的の花粉が濃縮されたことが示されました。本手法は花粉に限らず、他の細胞集団にも有効と考えられます。

 本研究成果は、2022年12月21日に英国の Quantitative Plant Biology 誌に掲載されました。

論文情報:
Target pollen isolation using automated infrared laser-mediated cell disruption.
Ikuma Kaneshiro, Masako Igarashi, Tetsuya Higashiyama, Yoko Mizuta
Quantitative Plant Biology (2022)

https://doi.org/10.1017/qpb.2022.24

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核が移動しない花粉管伸長の研究成果が掲載されました

2022年11月24日

 丸山班は昨年、立命館大の元村一基博士とともに栄養核と精細胞が移動しないシロイヌナズナの花粉管の研究成果を報告しました。今回、山岡班を加えた共同研究で「精細胞を形成せず、移動しない栄養核のみをもつ花粉管」を新たに作出することに成功しました(図中 bnb1 bnb2 wit1 wit2)。また、この核の先端輸送に頼らない花粉管の伸長能力について、現在考えられる仮説を提唱しました。

 本成果は2022年11月24日にFrontiers in Plant Science誌に掲載されました。

論文情報:
Possible molecular mechanisms of persistent pollen tube growth without de novo transcription.
Kazuki Motomura, Naoya Sugi, Atsushi Takeda, Shohei Yamaoka, Daisuke Maruyama
Frontiers in Plant Science (2022)

https://doi.org/10.3389/fpls.2022.1020306

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イネの硬く厚い組織を透明化するプロトコル論文が掲載されました

2022年6月27日

 近年、生物体内の構造を保ったまま立体的に観察する透明化技術が開発されています。しかしイネでは、茎など硬く厚い組織や、茎頂など撥水性の葉に包まれた組織は透明化溶液が浸透しにくく、観察の妨げとなっていました。そこで本論文では適切な組織固定ののちに、ビブラトームで目的部位以外を取り除き、透明化試薬に浸漬しました。その結果、透明化試薬の浸透性および均一性が向上し、さらに処理時間が短縮されました。茎から茎頂、そして幼穂までの内部構造を広視野、かつ連続的に観察することが可能となりました。本手法はイネだけでなく、これまで透明化が困難であった他の植物にも有効と考えられます。

 本研究成果は、2022年6月27日に国際的なプロトコルビデオ論文である JoVE(Journal of Visualized Experiments)に掲載されました。

論文情報:
Deep Fluorescence Observation in Rice Shoots via Clearing Technology.
Yoko Niimi, Keisuke Nagai, Motoyuki Ashikari, Yoko Mizuta
JoVE (2022)

https://www.jove.com/t/64116/deep-fluorescence-observation-in-rice-shoots-via-clearing-technology

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ボンバードメント法による花粉ゲノム編集と可視化の研究成果が掲載されました

2021年6月14日

 花粉がめしべに付着すると、花粉管が伸びて内部のオスのゲノムを胚珠へ運び、卵細胞と受精してタネになります。ボンバードメント法は任意の物質を物理的に細胞へ導入する方法です。本領域班員の水多と研究協力者の永原史織博士は、ボンバードメント法で花粉にCRISPR-Cas9を導入し、花粉のゲノム編集に成功しました。さらに導入された花粉を受粉し、胚珠に内容物が届けられる様子を可視化しました。

 本方法ではカルスや再分化といった、煩雑で時間のかかる培養操作が必要ありません。導入花粉を受粉するだけでゲノム編集植物を得られる可能性があることから、育種に時間がかかる植物や、組織培養が難しい植物などに有効な方法と考えられます。

 本研究成果は、2021年6月19日に植物生殖関連の国際誌「Plant Reproduction」に掲載されました。

論文情報:
Detection of a biolistic delivery of fluorescent markers and CRISPR/Cas9 to the pollen tube.
Shiori Nagahara, Tetsuya Higashiyama, Yoko Mizuta
Plant Reproduction (2021)

http://link.springer.com/article/10.1007/s00497-021-00418-z

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ゼニゴケが「傘」をつくりはじめる仕組み ー 生殖器の発生開始制御についての総説を発表しました

2021年6月14日

 モデル植物ゼニゴケが、造卵器・造精器と、ゼニゴケ目特有の傘状の生殖器托の発生開始をどのように制御しているか、そのメカニズムについての総説を、本領域班員の山岡らがまとめ、植物生殖関連の国際誌Plant Reproductionに2021年6月11日付で発表しました。
 被子植物では花成 (flowering) としてみられる栄養成長から生殖成長への移行は、植物の重要なライフイベントです。この総説では、コケ植物の生殖成長への移行の分子メカニズムの最近の研究をレビューしました。そして、ゼニゴケでは光や内的なシグナルが生殖器発生を直接制御しており、それらの制御モジュールは陸上植物全体で保存されていること、また花成のメカニズムは、進化の中で、それらのモジュールにフロリゲンによるシグナル伝達などが加わることで生まれてきたと考察しています。

論文情報:

Regulation of gametangia and gametangiophore initiation in the liverwort Marchantia polymorpha.
Shohei Yamaoka, Keisuke Inoue, Takashi Araki
Plant Reproduction (2021)

https://link.springer.com/article/10.1007/s00497-021-00419-y

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植物における二光子イメージングの動向についての総説を発表しました

2021年6月14日

 植物分野における二光子(多光子)励起顕微鏡を用いた最近の動向についてまとめた総説を、本領域班員の水多がまとめ、植物関連の国際誌Plant Cell Physiologyに2021年5月26日付で発表しました。
 蛍光タンパク質や蛍光色素が爆発的な発展したことにより、植物細胞や組織内を生きたまま、より早く、深く、高解像度で観察するイメージング技術が求められています。なかでも二光子顕微鏡は、生体深部を低ダメージで観察するのに適した顕微鏡です。近年は、観察のみならず、局所刺激やアブレーション、発現誘導など、観察だけにとどまらない報告や、組織の透明化技術と組み合わせた報告も増加しています。
今後、植物分野での活躍が期待されるイメージング技術の一つとしてまとめました。

論文情報:

Advances in Two-Photon Imaging in Plants.
Yoko Mizuta
Plant Cell Physiology (2021)

https://doi.org/10.1093/pcp/pcab062

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モデル植物ゼニゴケの総説がAnnual Reviews of Plant Biologyに掲載されました

2021年6月2日

 モデル植物ゼニゴケについての総説が、2021年3月8日、米国の総説集Annual Reviews of Plant Biologyのオンライン版に掲載されました。本領域アドバイザーの河内孝之先生が筆頭著者で、本領域班員の山岡が有性生殖についての項目の執筆を担当しています。

 

論文情報:

Development and Molecular Genetics of Marchantia polymorpha.

Takayuki Kohchi, Katsuyuki T Yamato, Kimitsune Ishizaki, Shohei Yamaoka, Ryuichi Nishihama. 

Annu. Rev. Plant Biol. (2021)

https://doi.org/10.1146/annurev-arplant-082520-094256

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領域代表の丸山 大輔 博士らの研究成果がNature Communications誌に発表されました

2021年4月22日

 花粉管は2つの精細胞を卵細胞のある胚珠へと運ぶ役割を持っています。精細胞は一対が花粉管の栄養核と繋がって花粉管先端へと輸送されますが、その仕組みはよくわかっていません。丸山班と立命館大の元村一基博士、そして名古屋大学の共同研究により、精細胞で細胞壁多糖の一種であるカロースを蓄積させることで、精細胞の先端輸送能力が極端に低下することがわかりました。この性質を利用することで、栄養核と精細胞が全く先端に輸送されない花粉管を作出することに成功しました(図中:cals3m + wit1/wit2)。
本研究成果は、2021年4月22日に英国Natureグループが発行するオンライン科学誌「Nature Communications」に掲載されました。

 

論文情報:

Persistent directional growth capability in Arabidopsis thaliana pollen tubes after nuclear elimination from the apex.

Kazuki Motomura, Hidenori Takeuchi, Michitaka Notaguchi, Haruna Tsuchi, Atsushi Takeda, Tetsu Kinoshita, Tetsuya Higashiyama, Daisuke Maruyama

Nature Communications (2021)

https://doi.org/10.1038/s41467-021-22661-8

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領域代表の丸山 大輔 博士が参画したケンタッキー大学の河島博士の研究成果がPNAS誌に発表されました

2020年12月8日

 被子植物の重複受精の過程において、これまで精核の移動はメスの配偶子の核に向かって移動するアクチン繊維の動きによって制御されていることがわかっていましたが、どのような分子がこのアクチン動態を制御しているのかわかっていませんでした。今回は精核の移動制御がクラスXIのミオシンによって制御されていることを明らかにしました。また、この精核の移動はアクチン繊維を足場として新たなアクチン重合を誘導するARP2/3複合体には依存していないこともわかりました。これは被子植物のメスの配偶子では他の細胞には見られない特殊なアクチン制御が行われていることを示唆しており、重複受精がスムーズに行われる謎の一端を解明した成果です。

本研究成果は、2020年12月8日に米国の「PNAS誌」に掲載されました。

論文情報:

ARP2/3-independent WAVE/SCAR pathway and class XI myosin control sperm nuclear migration in flowering plants.

Mohammad Foteh Ali, Umma Fatema, Xiongbo Peng, Samuel W. Hacker, Daisuke Maruyama, Meng-Xiang Sun, Tomokazu Kawashima

Proceedings of the National Academy of Sciences (2020)

https://doi.org/10.1073/pnas.2015550117

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